臆病者

はじめて一人旅をした。
といっても、時間がなくて、日帰りだったが。

電車の中では、眠ったり、本を読んだり。
そしてあの人のことを考えていた。

はじめから、ずっと思い出していた。
その時、その時の気持ちが、付いてきた。
途中から、考えるのをやめたくなったけど。
もう、止まらなかった。
涙が、溢れそうになった。

私は、あなたにすべて伝えた。
それでもおさまらないこの気持ちは、どうしたらいい？

後から、いくらがんばっても。
200％のエネルギーで、精一杯考えても。

取り返しのつかないことがある。

私は、それをしてしまったんだね。

ねえ。
あれから、私、本当に精一杯がんばったんだよ。
これ以上はない、と言えるほど。
それでも、駄目だった。
それでも、変わらなかった。

「それが人生だよ」
誰かが、そう言うだろう。

「きっといつか、いい思い出になるよ」
誰かが、そう励ますかもしれない。

そんな人に、聞きたい。
本当にそれでいいと思ってるの？
綺麗な思い出を作るために生きてるの？
それが人生だと、本気で思ってるの？
そこに意味を見出せてるの？
納得できる答えを持ってるの？

私は納得できない。

そんなこと言って。
本当は、疲れたんだよね？
本当は、虚しさに気づいたんだよね？
本当は、希望が見えなくなったんだよね？

あなたに、会いたい。
あなたに、会いたくない。
どっち？

あなたを、忘れたい。
あなたを、忘れたくない。
どっち？

あなたが、怖い。
わたしが、怖い。
どっち？

もう、これ以上。
傷つきたくない。
それの、何が悪いっていうの？